拝啓、ジェフ・シリーロ様

yosiie@マママママリナーズ

野球はメンタルのスポーツである。
特に打者の場合はその部分が多分にある。90マイル(144キロ)の直球が投手の手を離れてからベースを通過するのに要する時間は0.4167秒。『打とう』と思ってから実際バットがベースを通過するまでは0.2秒かかると言われている。0.2秒ちょっとでどこにどんなボールがくるか判断する、そんな世界で打者は投手の投げた球を打ち返しているのだ。"超"人的とはまさにこういうことであろう。
こんな世界で"狙って"打っているということも、"直観で"打っているということも大差ないのではないのだろうか?実際多くの野球選手は"筋肉記憶"というものを大事にする。つまり打撃とは感覚的な問題が大きいのだ。

ジェフ・シリーロが昨年すっかり滅入ってしまっていたことは多くの人が認めるところだ。生涯.311を打った好守・巧打の三塁手といった触れ込みでシアトルにやってきたシリーロは絶不調に陥って昨年の打率は.249だった。そして実際彼はシーズン中に抗鬱剤を飲んでいたし、「コロラドから選手をとるときは気をつけろ。あそこは引退前の選手がいくところだ。」と自虐的なコメント出したりもした。
しかし苦しんだからといって、それを人のせいにするのはいかがだろう?

1月18日の電子記事に私は今までにない驚きを覚えた。
シリーロが前監督ルー・ピネラの批判をしていたのだ。いやむしろ単なる悪口といった部類のものかもしれない。兎に角低俗でとてもビッグリーガーが、それ以前に社会人が口にするようなことではない。しかも場所は、高校での講演会で、だ。

ブレマートン高校でのマリナーズ・キャラバンで唯一の現役選手として参加していたシリーロは、サイン会のあとに行われた公演でこんなことを口にした。
「チームに馴染もうとしてもルー・ピネラのせいでなかなかそうできなかった」「彼がいなくなって嬉しい」挙句の果てには「彼がデビルレイズにきまってうれしかった。だって彼はメッツに行きたがっていたんだから」とまで発言したのだ。そう思っても仕方ないという同情の声があるかもしれない。しかし大衆(しかも高校)の面前で、はっきりと発言したのだ。親しいものにオフレコで漏らすにも抵抗があるような内容なのに。

今シーズン不振だったことについて「監督に気に入られようとしたことが最大の間違いだった」「最後の2ヶ月は『もう彼の言うことは気にしない。彼をみたら裸だと思えばいいんだ。そして笑っていればいいんだ』と思っていた」そう語った。たしかに彼の最後2ヶ月の成績は打率.275と悪すぎたシーズン中と比べて上昇している。

それは結果論なのではないだろうか?精神的に不安定だったということにしても、ピネラを気にしないようになったからよくなったのではなく、自意識過剰だった自分を反省すべきなのではないだろうか?03年彼が復活し、生涯打率.311の元のシリーロにもどったとしたらきっとこう言うだろう。「やっぱりルー・ピネラが悪かったのだ」

しかしそんな彼を誰も歓迎しないだろう。彼は一時の快楽と言い訳のために多くのファンを失った。

ピネラに熱望されての(トレードでの)シアトル入りしたときにシリーロは意気込み十分だった。そんな彼は新監督ボブ・メルビンについて「彼は分別わきまえたいい男だ。選手のことを尊重してくれる。彼とはうまくやっていける」と語った。もし03年も打率.249のシリーロのままだったら、彼は今度は誰のせいにするのだろうか?

マママママリナーズ