妥 解
2003年のマリナーズを展望する

文章:yosiie
マママママリナーズ

リトルボール戦術のススメ

 マリナーズは、広い本拠地セーフコ・フィールドの特徴を生かしたリトルボール戦術という形をとることによって勝利をつかむべきだった。リトルボールとは、長打による大量得点(ビッグイニング)を狙うのではなく、いかにしてランナーを進塁させ例え無安打でも1点をあげようとする、全員野球のことである。01年にマリナーズはAロドリゲスを放出し、怪我のJビューナーもレギュラーの枠からはずした。そしてBブーン、イチローを獲得しリトルボール戦術に転向する筈だった。
 しかし幸運なる監督Lピネラは、イチローの破竹の大活躍、Bブーンの大爆発、Jオルルッド、Eマルティネスの安定した働き、Aロドリゲスの代役Cギーエンの急成長など多くの"運"に助けられ、打線が見事に機能。おわってみればメジャーリーグ記録となる116勝をあげ、ぶっちぎりで地区を制覇した。この時点でピネラは方向転換をしていた。スモールボールではなく、長打のないビッグイニング戦術をとることにしたのだ。

 そして迎えた2002年。マイナーMVP投手スタークという代償をはらって手に入れたJシリーロは開幕から大スランプ。ブーンのバットは大型契約の重圧からか湿り、マルティネスは調子が上がらないまま怪我してしまった。イチロー、キャメロンの超がつくほどの活躍でなんとかマイナス分をおぎなってきたマリナーズだったが、マルティネスの戦線離脱とともにだんだんと風向きが悪くなり、キャメロンが不調に陥るとあっという間に勢いは失せてしまった。残塁につぐ、残塁。
 繰り返すようだがリトルボールとは、ビッグイニングを狙うのではなく、出塁したランナーをなんとかして進塁させて"1点"を確実にとろうとする野球のことである。ただしこの場合、決してバントがリトルボール戦術であり、エンドランがビッグイニング野球であるとはいえない。エンドランであれ、バントであれ少しでもランナーを進めようというのがリトルボールの考え方なのだ。おのずとリトルボールを実行するためには出塁ができる打者をばらばらに配置することが求められる。現代リトルボール戦術の申し子Tラルーサは「いいバッターはばらばらに配置する。仮に4人をそろえれば得点のチャンスは3イニングしかなくなる。残り6イニングは水鉄砲で攻撃しなくてはならない。」と言う。逆にビッグイニング野球をするには長打を打つ選手の前にできるだけ出塁ができる選手を集め、塁を埋めて長打(本塁打)で大量得点を狙うのが常套手段だ。

 シアトルは01年あまりに上手く行き過ぎていた。みんなの出塁率が良く、みんなの打率がよかった。だからリトルボールでありながらも、次々と生まれる安打によりビッグイニング野球をすることができた。できるからにはそれを狙う、監督は出塁率ができるだけ上がるように打順を組替えた。しかし02年はそうはいかなかった。それでも監督はリトルボール戦術でビッグイニングをつかむこの新しいやり方をかえようとはしなかった。リトルボールでビッグイニングをつかむためには多大な犠牲を覚悟しなければならない。
 たとえば二死満塁で短打を放ちランナー二人が帰って一、三塁となったとしても次の打者が倒れれば"二者残塁"ということになる。またそこでヒットすらでなかったら"三者残塁"。ビッグイニング野球ではそこまでランナーがたまることはまず無いし、仮にあったとしても、(少々確率が下がったとしても)打球が前に飛んだときの得点数は3点、うまくすれば4点をとれる可能性だってある。
 得点も大きいが、犠牲も大きい、そしてそれが成功するには"多大な運"が必要である。しかし残念ながら02年のマリナーズにはもうそれは残っていなかった。



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今季のマリナーズの総得点814点はリーグ14チーム中6位であるが、長打率.419は9位、本塁打数にいたっては152本で10位である。

次項 リトルボールとイチロー

文中の敬称はすべて省略させてもらいます。