妥 解
2003年のマリナーズを展望する

文章:yosiie
マママママリナーズ

リトルボールとイチロー

 リトルボール戦術に無くてはならないのが、得点源となる選手、つまり出塁する選手の存在である。
 チーム全体で選球眼をよくし、投手のタイミングをつかむ、ランナーを殺さぬよう打球方向を意識したシチュエーションバッティングをする、などその他たくさんの要素が絡み合ってリトルボールは成り立つのであるが、まずは出塁する選手あってしかりである。その出塁する選手のうちで最も多くのチャンスをもらえるのがリードオフ、1番バッターである。
 リードオフの役割はたくさんあるが、最も勝利に直結するのが"出塁すること"である。特に初回の場合だとその重要性は高く、先制点を取ったチームが勝利する確率は65%以上とも言われている。

 リトルボールにおいて得点が最も入りやすいパターンは一死、もしくは無死でランナーを三塁におくことである。まず初回にその状況をつくりだすためには大きく分けて2つ、ランナー二塁でバッターがバントか安打を放つ、ランナー一塁でエンドランを決めるということが考えられる。その中で一番リトルボールで重宝されているのが無死二塁のパターン、つまりリードオフが二塁打を放つか、出塁をして盗塁を決めた状況である。

■アリーグ・リードオフの二塁打TOP5■
名前(チーム) 二塁 打率 出塁率 盗塁
1 Aソリアーノ(NYY) 51 .300 .322 41
2 Rウィン(TB) 39 .298 .360 27
3 Sスチュワート(TOR) 38 .303 .371 14
4 Jジョーンズ(MIN) 37 .300 .341 6
5 Jデイモン(BOS) 34 .286 .356 31
5 Rデューラム(CHW-OAK) 34 .289 .374 26
8 イチロー(SEA) 27 .321 .388 31

 上の表を見てまず意外に思われたのがイチローのあまりの二塁打の少なさ(リーグ全体では54位)ではなかろうか。もしくは他のリードオフの二塁打の多さに驚いたのかもしれない。リードオフが二塁打を放てば次の打者は右方向へのゴロを打つだけで一死三塁の完成である。もちろん念を入れてバントにしてもいいし、エンドランにしてもいい。ともかくリトルボールを提唱する監督としては、ほとんどノーリスクで三塁を陥れることができる二塁打こそが最高の状況であるといえるのだ。
 今季のイチローの二塁打の少なさは膝の怪我で盗塁も少なかった(15盗塁死はリーグ1位)ことを割り引いて考えねばならないが、51盗塁と快足を飛ばしていた去年であっても二塁打はわずか34本である。そう、イチローは二塁打が少ない選手なのである。(この際日本プロ野球との関連性は一切省かせてもらう)
 今季イチローがあと一歩でホームに帰ってこれなかったシーンを何度見ただろう・・・チームメートの打力のふがいなさもあるだろうが、そもそも戦術的に"ホームに帰ってこられない"ようにマリナーズはつくってしまっているのだ。そういう意味でリトルボールのリードオフという役割を任せるにはイチローは非適格者とも言えるし、トレードで獲得し来年からはチームメートとなるRウィンのほうが適格者なのかもしれない。もちろんイチローにはそのマイナス面を覆すような高打率と高出塁率があるのではあるが。

次項 二番打者補強論は正しいのか?

文中の敬称はすべて省略させてもらいます。