妥 解
2003年のマリナーズを展望する
文章:yosiie
二番打者補強論は正しいのか?
マママママリナーズ
シーズン中、「マリナーズは二番打者を補強すべきだ」との提言が数多くなされてきた。イチローのあとを打つ選手がふがいない、という論ではあるがはたしてマリナーズの二番打者というのは弱かったのだろうか?本当にふがいなかったのだろうか?
■2番打者の成績比較■
チーム 打率 本塁 打点 二塁 四球 盗塁 出率 マリナーズ .291 15 88 36 79 29 .371 レッドソックス .275 19 92 49 63 12 .340 ヤンキース .282 19 79 22 81 29 .365
上の表はリーグ有数の1番打者をもつレッドソックス(Jデイモン)、ヤンキース(Aソリアーノ)、そしてマリナーズの2番打者の成績比較である。実際リーグ内でもこの3チームの2番打者の成績が突出している。つまりリーグトップ3を並べた形である。
見比べてみると決して非難されるべき数字ではない。いやむしろ優れているというべき数字である。明らかに低いのは本塁打くらいなもので、ほかを見比べてもリーグトップと言っても問題ないだろう。またそれぞれの数字においてもチーム内で2位〜4位の範囲にあり、これら7項目の平均2.85位はチームで1番の数字である。これほどの数字を残している二番打者にこの上何を求めようというのだろうか?
■打球のゴロ率■ 名前 ゴロ/フライ 打順 1 イチロー(SEA) 2.48 1 2 Dジーター(NYY) 2.23 2 3 Bグリーブ(TB) 2.08 4 4 Cグーズマン(MIN) 2.04 2 5 Bウィリアムズ(NYY) 1.87 4
それと同時にイチローを二番で使うべきだ、という声があがっているのも事実だ。右の表はは1フライあたりゴロを打つ確率をあらわしたものだ。最も多く打った打順が一番右の数字であるが、見たとおり2番、4番が多い。もちろんリードオフも足をつかった内野安打を生かすためゴロを多く打つことは求められている(実際例年であればもう少し1番の比率が高い)。しかし2番にゴロを打つのが上手い選手をもってくることのアドバンテージは単に出塁をあげるためにゴロを打つ以上のものがある。それによりランナーを進めることができるからである。
■得点圏打率■ 名前 打率 打点 1 Mラミレス(BOS) .439 74 2 Mスウィニー(KC) .398 64 3 Mテハーダ(OAK) .375 98 4 Bウィリアムズ(NYY) .374 84 5 Eバークス(CLE) .369 59 6 Aロドリゲス(TEX) .366 87 7 イチロー(SEA) .361 42
もちろんそのためには高い出塁率のトップバッターが必要なのではあるが、そこはオフにトレードで獲得したRウィンによってカバーすることができる。リードオフに求められる球数を多く投げさせるという点において、ウィンは1打席あたり平均3.87球を投げさせている。これはイチローの3.48球を大きく上回る。
こうやってみるとイチロー二番打者説に死角はないように見える。しかしそれは"ビッグイニング野球"を作ることを前提に考えた結果である。クリーンナップ、特に最近は3番に最強の打者がおかれることが多く、実際打点を多く稼ぐのは3番打者である。
右図は規定打席に達した選手の得点圏打率上位である。今年はTOP5入りはしなかったが昨年.449で1位となったイチローは.361で7位に入っている。注目すべきは上位全てがクリーンナップ(特に3番)を打っている選手という点だ。つまりマリナーズは2番からクリーンナップの働きを期待できるということである。
しかし言い換えると、ランナーを還すことのできる選手をくっつけてしまうことになり、Tラルーサの言うところの『水鉄砲』の下位打線の流れをずるずると引きずってしまうこととなる。信頼できる打者は離しておいておくほうがいいのである。
それではウィンは信頼できない『水鉄砲』なのか?彼の得点圏の成績.316/6HR/64打点というのは立派な成績であり、決して信頼できないものではない。実は今季の成績ではマリナーズの2位オルルッドよりも上回っているのである(このことは"最終章"において後述する)。
つまりイチローを2番に置こうが、リードオフにウィンがいればマイナス面は少なくて済み、多くのアドバンテージを得る。イチロー二番打者論は決して間違ってはいない、リードオフにウィンがいれば・・・ではあるが。
次項 Jシリーロという男
文中の敬称はすべて省略させてもらいます。